

レノファ山口FCは今節、J2残留を目指して順位が近いカターレ富山と対戦する。この試合に向けて、チームは今週のほとんどの練習を非公開で実施。集中した環境下でトレーニングを積み、得点をより多く取れる攻撃と一切の失点を許さない守備を構築し、富山戦での必勝を期す。
前節の今治戦を振り返ると、レノファは前半から相手に効果的にプレッシャーを掛け、敵陣でのプレーを長く続けた。サイドを使える場面が多く、76.磯谷駿のクロスボールに9.有田稜が合わせたり、分厚い攻撃からセットプレーを得てチャンスを作ったりした。そこで得点を奪えず、後半の開始直後に失点したものの、終盤には7.三沢直人のフィードを受けた45.山本桜大が鮮やかなボールさばきで同点にするシュートを放った。
上位から勝点1を得たのは、今のレノファにとっては大きなトピックと言えるだろう。勝点3が欲しいとはいえ、J2残留に望みをつなぐドローゲームにした経験を生かして、今節は勝利に手を伸ばしたい。相手の富山が今治とフォーメーションでは似ており、今治戦で出た好材料と反省点をつなげられるのもレノファには追い風だ。
ただ、富山の戦い方は今治とは異なる。今治は前線に明瞭なターゲットを置いていたが、富山は自陣からショートパスを使って丁寧に組み立て、敵陣に入ればサイドに人数を集めてチャンスをうかがう。人数の厚みを生かしてセカンドボールを回収し、プレーエリアの広い吉平翼(背番号27)、したたかに動く小川慶治朗(同11)を使う場面も多々ある。18歳の亀田歩夢(同25)の積極性もストロングポイントだ。
相手の戦い方はかなり変わってくるが、結果的には前節と同じでサイドでの攻防とセカンドボールの奪い合いがポイントになりそうだ。富山にはセンターバックから飛び出していく元レノファの香川勇気(同3)も加入し、サイドの攻撃は分厚い。レノファとしては相手に両サイドを自由に使わせず、逆にレノファがプレッシングを掛けながらボールを奪って優位性を保ちたい。
攻撃ではフィジカル面でもレノファが有利に立てそうだ。タイミングが合っているクロスボールを使ったり、ショートカウンターから一気にシュートまで持ち込んだりして、高さやスピードで決定機を増やしたい。前節も惜しいシュートがあった9.有田稜は次のように語ってゴールを誓う。

「ミスマッチが起きているところを狙って完璧なクロスボールが上がってきている。今治戦も決めたかったし、決めきりたい。クロスボールはみんながこだわってやれているし、ピンポイントで合わせられるようになっている。先に点を動かすことがカギになるので、FWとして仕留めることにこだわっていきたい」
また、今節からベンチに戻って指揮を執れる中山元気監督は「今治にもあれだけ多くの方が来てくれた。声援に応えたい」と話し、こう続ける。

「富山は人数を掛けてビルドアップしてきて、ボールを動かせる立ち位置も取るが、つないでくる分、カウンターのチャンスも生まれる。そのやり合いでどちらが主導権を握るか。どういう形になっても勝ちに導けるようにしたい。勝てば(残留圏のチームに)プレッシャーを与えられる。レノファを支えてくれる皆さんのなんとかしたいという気持ちに応えられるように、現場の自分たちが責任を持ってプレーしていきたい」
みらスタでは25日にレディースのプレナスなでしこリーグ2部入替戦第1節が行われ、今節の富山戦はそれに続く“みらスタ2連戦”となる。男子チームは勝点差9を詰める残留争いの中にあるが、勝てば来週は熊本との6ポイントマッチに持ち込める。今節はイレブンが再びオレンジのユニフォームに袖を通す試合だ。この燃ゆるオレンジの魂を震わせて、追撃の勝利を引き寄せよう。

3試合連続で先発出場を続けている27.小澤亮太は今節もサイドを攻略するキーマンとなりそうだ。試合を重ねるたびに後背の4.松田佳大や8.野寄和哉との息が合い、推進力を出す場面は増えている。小澤は「武器を勝利につなげたい」と意気込み、試合での全力疾走を誓う。
小澤は中学年代までを埼玉県川越市の地元サッカークラブで過ごし、ユース年代では昌平高校で高校選手権に出場した。記憶に残っている人も多いかもしれないが、高川学園と対戦した1回戦は昌平が土壇場で追いつき、PK戦で競り勝つという激闘。小澤は6人目のキッカーを担ってキーパーの逆を突いている。その後、チームはベスト8にまで勝ち進んだ。
日本体育大を経てレノファに加入。今年はルーキーイヤーながらリーグ戦15試合に出場し、カップ戦でも存在感を示す。4月9日のJリーグYBCルヴァンカップでは、左ハイサイドのFKでキッカーの10.池上丈二からのパスを巧みなトラップで収め、すかさず左足一閃。ゴールの右にしずめて、1stラウンド3回戦進出の流れを作った。
「スルーするという狙いだったが、それをすると取られそうだったので判断を変えた。トラップしたらコースが見えたので、本当にそこに向けて振り抜くだけだった。実感が湧かなかったが、周りがナイスナイスと言ってくれて、決めたんだなと思った」
J1首位チームから挙げたプロ初ゴール。試合後にそう話した小澤がチームの信頼を射止めた瞬間でもあった。4日後にはリーグ戦に初出場。その相手が今節のカターレ富山だった。
初舞台からの半年間、小澤は4-4-2の左サイドバックで先発したり、途中出場で左ウイングバックに就いたりと多くの役目をこなす。チーム状況もあり持ち味のスピードを生かすよりも、守備で相手を封じようとすることのほうが多かったが、小澤はそれが糧になっていると話す。
「今シーズンを戦ってきて間違いなく守備の部分で危機察知や予測の部分で上回れてきているので、さらにアグレッシブに自分からボールを奪いに行ける距離感でやっていきたい。攻撃でも相手に動きを読まれず、自分の武器をより発揮できるような持ち方をもっと出し、結果につなげられるように解像度を上げていきたい」
自分自身のプレー精度の向上に“解像度”という表現を用いるのには、22歳の若人らしさも感じるが、小澤自身が話すように状況判断が向上し、的確なプレーが選択できてきている。ただ、前節も相手の交代選手の動きはつぶさに捉えていたが、「活性化してくる相手に対して対応が遅れてしまった。自分たちで変えられるところはあったので悔しい」と天を仰いだ。
もっとも攻撃では富山と前回対戦した時期とは違って、小澤の良さは勢いを持って出せるようになった。2節前・鳥栖戦の立ち上がりでは、ボックス内での競り合いから生まれたこぼれ球を拾い、試合のファーストシュートを放つ。前節は悔いが残ったとはいえ、相手ウイングバックを制して前線に進出。ロングスローも使いながらチャンスを作った。
小澤は「今治戦は自分のところに先にボールが入る試合だった。カズヤ(野寄和哉)くんをもっと生かせれば」と試合を振り返り、「気迫や気持ちの部分で上回っていける場面はあったが、切り替えはもっと早くできる」と強調。今治戦をバネに、1週間の準備期間でも“解像度”の向上に取り組む。
来る試合は勝利のみが求められる90分間となる。小澤のサイドは前節以上に対人守備が増えるかもしれないし、スコア次第では引いた相手を崩さないといけないかもしれない。それでも小澤は勝利のために走る。
「富山戦も相手と1対1になる場面では絶対に勝るようにしないといけない。ブロックを作られたらクロス精度をいかに上げられるか。自分のようなウイングバックはそこが重要になってくる。今季もあと1カ月ちょっと。全ての試合で、フルで良いパフォーマンスを出し続けられるようにしていく」
ルーキーがチームを引っ張る大一番が、まもなく始まろうとしている。

今治戦は久しぶりの試合でした。チームの力になれることを嬉しく思いながら試合をしましたが、勝ちに向けてやってきていた中で、アンラッキーな形での失点には残念な部分があります。今治は前線のブラジル人選手にボールを当ててセカンドボールを拾ってくるチームでした。前半は相手にチャンスを与えずに上手くできていたと思いますが、後半が始まってすぐに自分たちのミスから失点し、勝てなかったことは残念に思っています。
最近の試合では相手が引いて構える守備が多く、自分からロングボールを前線に届けるというのはなかなか簡単ではないです。今治戦は相手にブラジル人選手がいたこともあり、前線に向けてキックを生かすというのは難しいという状況だとは感じていましたが、ナオト(三沢直人選手)の良いボールから得点にできました。試合でまだ足りない部分があると感じたので、攻撃の糸口をもっと見つけて、よりよくやっていきたいと思います。
シーズンの終盤の富山戦は、どちらにとっても重要なゲームとなる場面です。どちらが先に1点を取るかが重要になってくる試合です。互いにディフェンスで引くところもあると思いますが、最初の1点がキーポイントになってくるので、自分たちが先に取れるようにしていきたいです。
今治戦の前半は自分たちのペースでできていて、意図的に背後のスペースを使えていて、守備でも前から行けていました。ただ、そういうところで得点を取れなかったことが引き分けに終わる一因になってしまったと思います。相手にまだ行けるぞと思わせてしまったと思いますし、自分もチャンスがあったので、仕留められるようにやっていきたいです。
自分の長所でもある攻撃の部分でもっとチームのためにやっていかないといけないです。感覚的なところではクロスはイメージが(FW陣と)お互いに合致していると思います。後ろから攻撃の厚みを出していければ自ずと得点の機会は増えると思うので、もっとそこは出していきたいです。オザ(小澤亮太選手)が積極的に前に出てくれているので、自分はバランスを取りながら配球するようことも心掛けていますが、もっと後ろから前に出て行く攻撃は増やしたいです。
富山はボールを大切に後ろからつないでくるチームです。サイドの攻防はやはり多くなると思います。そこで個で負けないことはもちろんですが、人数を掛けて前に出てこられた時にも、どれだけチャレンジ・アンド・カバーをスムーズにできるかが大事です。ボールを持たれた時にどれだけ耐えられるかも重要になるので、焦れずにやっていきたいと思います。
前節フォーメーション
前節ハイライト
前回対戦ハイライト
スタッツ
カターレ富山 PICK UP PLAYER
香川勇気選手(背番号3)
元レノファのセンターバック
ハードワークと攻撃の積極進出に要警戒!
3バックを敷く富山守備陣の一翼を担うのが、夏に加入した香川勇気だ。サイドバックとセンターバックの両方に対応でき、守備の網を張ったり、前線に顔を出して決定機に関わったりするマルチプレーヤーが富山側の注目選手であり、試合のポイントにもなる。
香川は2015年に阪南大からレノファに加入した。初年度から敵陣でのボール保持に関わり、ハードワークも光ってチームのJ2昇格に貢献。17年のシーズン途中に長崎に移籍し、J1リーグ戦にも出場する。2020年以降は大分トリニータでプレーしていたが、この夏に完全移籍で富山に移った。加入時には「自分の持てるものを全て出してチームに貢献したい」と誓い、実際に8月からは中心選手の一人として富山を束ねる。
33歳のベテランとなった今も香川の良さは変わらない。守備で厳しく戦い、攻撃では味方の位置を見ながらタイミング良くサイドを突破。相手陣地に入ればクロスボールを上げるほか、こぼれ球にも素早く反応する。香川が積極進出すると、レノファ側の注目選手でもある小澤と対峙することになるだろう。双方にとってサイドの攻略は試合のカギを握る。レノファが優位に立つためにも、香川の動きを確実に視野に入れて、前向きに戦うことが必須になる。
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2025シーズン最終戦