
ホームでの今シーズン最初の試合がまもなく始まる。敵地での開幕戦を悔しい敗戦に終えたレノファ山口FCは、ファーストゲームでできたことと、修正すべきことを整理してホーム初戦に備える。日曜日の維新みらいふスタジアムに迎えるのは難敵のV・ファーレン長崎。難しい試合になるのは避けられないが、18.亀川諒史は「勝てる隙はある。それがサッカー。まとまって戦えれば、周りからの評価は覆せる」と一丸となってみらスタでの躍動を誓う。
言うまでもなくこの90分間は、相手の攻撃にさらされる時間が長くなる。レノファに風が吹く時間はヴァンフォーレ甲府との開幕戦よりは短く、チャンスも決して多くは作れないだろう。しかし、レノファが攻め手を欠くということにもならない。例えばカウンターは有力な攻撃手段であり、相手が前に出てくる分、決定機につながりやすい。
パスを使った揺さぶりもカギを握る。実際に開幕戦で長崎と対戦したロアッソ熊本はショートパスを使って相手を揺さぶり、最終的にクロスボールから2得点を挙げることに成功した。フォーメーションの噛み合わせから、相手のボランチ脇やサイドバックの外側はスペースができやすく、7.三沢直人や40.成岡輝瑠が中央でさばき、8.野寄和哉、55.岡庭愁人などがサイドでクロスを上げるような展開を数多く作れれば、ゴールを引き寄せられる。
甲府戦では野寄から有田へのクロスで好機につながりそうなシーンがあり、有田は「レノファには良いクロスを上げてくれる選手がたくさんいる。貪欲に狙っていきたい」と手応えを口にする。相手を揺さぶったあとのフィニッシュワークでは、すでにできつつあるサイドと中央のホットラインに注目だ。
対する長崎は外国籍選手がセンターレーンに並び、さらにサイドからは日本人選手が果敢に前線に顔を出している。攻撃力のあるチームであることは間違いなく、昨シーズンもリーグトップの74得点をマークし、今年も開幕戦でいきなりの3ゴールを奪取。2失点しても3点を取って勝てるという攻撃力を早くも見せつけた。
3点のうちマテウス ジェズス(背番号10)がPKを含む2点を決め、センターFWのエジガル ジュニオ(背番号11)が1ゴールを決めた。彼らに個の力で挑むのは現実的ではなく、レノファは組織的な守備で対応することになる。甲府戦でも守備組織自体は大きくは崩されていないため、基本に忠実にしっかりとゴールを守り抜きたい。
守備の最後の砦であり、後方からフィールドプレーヤーを動かすキーマンでもある1.ニック マルスマンは「前節成し遂げられなかったクリーンシート(無失点)を見せたい」と堅守を約束し、「負けたあとの次の試合は常に前を向いてやっていかないといけない。ホーム戦でたくさんのファン、サポーターに会えるのは楽しみ。良い結果を残せるように頑張っていきたい」と話す。もちろんニック マルスマンにはカウンター攻撃に転じた時のキックにも期待が懸かる。
いよいよ我らがホーム、維新みらいふスタジアムでの試合が始まる。今節は相手にボールを持たれる時間帯がどうしても長くなるが、そういうときこそスタジアムを包む声援が選手たちに勇気を与える。
そして、ボールを自分たちのものにできれば、前節以上の迫力でゴールに迫れるに違いない!
ホームの利を最大限に発揮して、難敵からの勝利を掴み取ろう!
新加入でキャプテンの一人に指名されたのが18.亀川諒史だ。湘南ベルマーレでプロキャリアをスタートさせ、アビスパ福岡、V・ファーレン長崎などで活躍したほか、年代別代表にも選ばれてきた。昨シーズンも福岡でJ1リーグ戦に26試合に出場している。
若い選手が多いレノファを成長させるには亀川の経験値は欠かせない。亀川自身が「若い選手が多いので、チームを引っ張っていきながらやっていくという考えは(キャプテンを任命される前から)あったので、より引き締まる思いがする。責任感を持ってやっていきたい」と役割を自認する。
高校以来のキャプテンを任され、20.河野孝汰とともにチームを束ねる。練習後の取材で報道陣から「どういうキャプテンになりたいか?」と問われた亀川は、「自分なりのキャプテン像を描いていきたい」と話しつつ、これまでのキャリアで接してきた先輩たちの姿も頭の中に入れていると明かした。その一人が柏レイソルのバンディエラとしてチームを引っ張ってきた大谷秀和さんだ。
「大谷さんがピッチにいるとチームの引き締まり方が違う。途中から出てきた時のプレーも、引き締まり方でも、これまでにないような感覚だった。それを自分ができるかは分からないが、そういうところは学びながらやっていきたい」
ミスターレイソルの背中を見てきた2018年の柏時代を回想しながら、「チームがうまくいかない時に、再び一つになって同じ方向を向けるようにする。コータ(河野孝汰選手)、コウヘイ(田邉光平選手)、ボムくん(キム ボムヨン選手)とともにそういうところをやっていきたい」とメリハリのあるキャプテン像を思い描く。
プレーの面ではピッチに立つと、サイドバックとして縦に仕掛けたり、隙を生まないポジション取りをしたりして、攻守に関わる。開幕戦は惜敗したものの、「大きく崩されたという場面はそんなになかった。ミスからチャンスを作られたが、守備のところはおおむねやれたと思う」と振り返り、攻撃のほうにこそ課題があったと話す。
「攻撃のところでキャンプでやれていたことがなかなか出せなかった。相手の嫌がるプレーをしてチャンスはできていたが、そこに積み上げてきているものをプラスしていく。一つのチャンスを仕留めて勝つというチームでは上に行けないと思う。チーム全員でより多くのチャンスを作り出すようにしていきたい」
向かう相手は3年間所属したV・ファーレン長崎だ。亀川は「思い入れのあるチーム。楽しみな一戦だが、やるからには勝ちたい。選手は入れ替わっているが、長崎というチームと対戦できるのを楽しみながら、結果にこだわっていく」と話し、甲府戦で消化不良に終わった攻撃を古巣を迎えるホーム開幕戦にぶつける。
「J2優勝候補と言われているチームにホームで勝てれば間違いなく勢いが付く。勝つために、一人一人が何ができるか。練習、ミーティングで擦り合わせて臨みたい」。自らを「口数が多いタイプではない」と評する亀川だが、静かにも闘志を宿す口調が一層頼もしく映る。いざホーム開幕戦。守備をオーガナイズし、攻撃で違いを生み出し、まずはプレーで勝点3へとチームを導いてみせる。
甲府戦は前半を無失点で終わらせようと最終ラインでしっかり話していて、そこができたのは良かったですが、セーフティーにボールを入れすぎて落ち着かないゲームになってしまったと思っています。後半は一瞬の隙でやられてしまったので、スローインからの守備のところでも隙を与えないことをもう一度意識していかないといけないと思います。
長崎はルーズボールも入れてきて、外国人選手が一人でどうにかできるというチームという印象があります。そこに対してはセンターバックが厳しく行かないといけないと思います。そこの勝負になってくるというのは自分自身でもよく分かっています。相手はスピードもあるので、守備で入れ替わられてしまったらやられてしまう。でも相手に向かっていかないと相手に自由に持たれてしまうので、厳しく行きたいです。外国人選手への守備にはそんなに苦手意識はないので、自信を持ってやっていきたいです。
逆に相手の守備には隙もあると思います。良い攻撃をして勝つために、最終ラインやチーム全員で協力して失点0の時間を長く続けられるかがカギになると思います。
秋田戦はディフェンスラインの跳ね返しがより大事で、ボランチや前の選手のプレスバックもいります。全員が走って戦わないといけない試合になると思います。開幕戦も内容は悪くはなかったですが、パーフェクトではないですし勝てていないので、もっともっと細かいところを修正し、強度も上げて、勝ちを取りにいきたいと思います。
開幕戦は最初は外から俯瞰して見ていたので、両方のやりたいことはよく見えていました。自分のやるべきことを考えながら試合に入れましたが、結果がついてこない試合になりました。突き詰めていかないといけないと思います。チームとして蹴るのか、つなぐのかの共有のところで少しズレもありましたが、開幕戦という難しい状況だったので、試合を重ねるごとに改善していければ良いと思います。
ただ、一番最初に考えるべきはゴールです。ゴールから逆算して、何が有効か。つなぐほうがゴールのために優先されるのであればそちらを選ぶべきだと思いますが、(蹴るかつなぐかの)選択はゴールから考えた時の過程でしかないので、どちらかにこだわらずにやることも大事だと思います。決定機がなかったわけではないので、もっと大胆にというか、足を振れる場面では振っていく思い切りの良さも大事になると思います。
開幕戦の結果は残念でしたが、長崎戦はホーム戦でできる強みやアドバンテージを存分に生かしていきたいです。120パーセントの力で戦える舞台だと思います。みんなで躍動し、試合を見てくださる方々と一緒に喜びを分かち合いたいと思います。
今までは足元でつなぐだけになっていた場面でも、全員が共通理解を持ってできていると思います。長いボールを入れても、しっかり拾ってそこから二次攻撃につなげています。同じ意識で、同じ絵を描けているのが一番良いところだと思います。1万人プロジェクトもやっていただいていますので、来てくれた人に楽しんでもらえるように、勝ちにこだわってやっていきたいと思います。
前節フォーメーション
前節ハイライト
前回対戦ハイライト
スタッツ
V・ファーレン長崎 PICK UP PLAYER
松澤 海斗 選手
テクニックのあるドリブラー
個よりも組織の対応が必須
長崎は外国籍選手を中心に少人数で攻撃を完結できる力を持っているものの、日本人選手たちのサイド攻撃も迫力がある。縦への推進力を発揮している選手の一人が、松澤海斗(背番号38)だ。開幕戦は後半途中から出場し、縦へのドリブルで対戦相手の守備を崩した。62分にはボックス内で右に左にと切り返してクロスボールを上げ、マテウス ジェズスをアシスト。圧巻のゴールシーンを作った。
レノファはテクニックのあるドリブラーに対して、翻弄されない守備が必要になる。直接対峙するのは55.岡庭愁人など右サイドバックの選手になるが、個で対応するよりもコンパクトな陣形を崩さず、組織で守るほうが賢明だろう。
その点では対戦を心待ちにする4.松田佳大の役割は大きい。同年代の松田は「外国人の強烈な個は抑えないといけないが、長崎はサイドで起点にはる選手も強烈。松澤海斗はスピードがある。対戦できるのは楽しみだし、今回は勝ちたい」と熱く語る。ポジション上は松田と松澤がマッチアップする可能性自体は低いが、松田の声掛けでレノファの守備組織を堅牢に保ち、サイドアタッカーが進出する余地を削ることが、無失点ゲームへの近道になりそうだ。
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