
水戸ホーリーホックを迎えての一戦は、レノファ山口FCの総力を結集する「全力12,000人プロジェクト」のホームゲーム。レノファイレブンは中2日という短い準備期間ながらも、維新みらいふスタジアムで熱戦を見せるために、しっかりと調整をしてきた。今日こそはスタジアムが一丸となって、我らがホームで勝利を掴み取ろう!
レノファは2節前のジュビロ磐田戦で攻撃でも守備でも前向きに臨んでハードワークを続け、勝点3を手にした。前節のベガルタ仙台戦は一転して悔しい試合となったが、まずはハードワークすることを大前提に、90分間を戦い抜きたい。
その上で大事になるのがプレスの掛け方だ。前節の仙台戦では相手の攻撃開始地点にプレスが掛からず、ボランチに前を向かれたり、サイドアタッカーの縦の突破を許したりした。ハーフタイムで状況を整理し、後半はレノファが良い守備から良い攻撃を遂行できるようになったが、3試合ぶりの先発となった9.有田稜にとってはほぞを噛む試合となった。
「可変してきたチームへのプレッシングがはまらない時間帯があり、後半は改善して自分たちの時間帯も作ることはできましたが、そこでの3失点目でゲームが決まってしまった。なかなか攻撃ではチャンスがなかった試合でしたが、決めないといけない。ここまで早く復帰できるとは思わなかったので、メディカルスタッフ、トレーナーへの感謝も込めて、一発を決めたいです」
今節の水戸も攻撃面では仙台と似ている面があり、センターバックが幅を取ると、ゴールキーパーやボランチが絡んで3人以上で組み立てを始める。ミドルゾーンを越えると攻撃陣が特徴を発揮し、左サイドでは津久井匠海(背番号23)が鋭い動き出しで敵陣深くに入り、前線では今季ここまで6得点の渡邉新太(同7)がゴールを狙う。
レノファの前からのプレスがもたつくと、渡邉などへ入るボールの質が上がることになる。ただ、仙台戦でオナイウ情滋、郷家友太などに前を向かせた苦い経験を生かせれば、同じような攻撃手法の相手に再描画を許すことはないだろう。しっかりとしたプレスを掛けて、相手の攻撃を無力化していきたい。
また、水戸は4試合連続で無失点と堅守を誇る。フォーメーションは4-4-2で仙台と同じだが、バックラインの4枚と中盤の4枚が綺麗に整い、コンパクトなブロックを構築する。
堅牢なブロックを動かすには、シンプルにゴール前に供給したり、遠目からでもシュートを放ったりする必要もある。磐田戦では7.三沢直人が前半から積極的にシュートを放ち、前節は11.横山塁のミドルシュートが19.山本駿亮の得点へとつながった。こうしたアグレッシブさを出せればブロックが綻んでいき、9.有田稜や34.古川大悟の高さ、30.奥山洋平や45.山本桜大のスピードが存分に生かせるようになる。すなわちレノファ攻撃陣の本領発揮こそが得点への重要なファクターだ。
今節は前線からのプレスを繊細かつ確実に効かせることが無失点につながり、攻撃ではブロックに隙を作るための大胆さが大事になる!
頭も体もフルに動かさないといけないが、ホームサポーターの大きな声援がハードワークの源泉。全力12,000人プロジェクトのホームゲームを、スタジアムの全員の力で勝ち取ろう!
4.松田佳大はセレッソ大阪U-15、京都橘高、東洋大でプレーしたのち、2023年に水戸ホーリーホックでJリーグ入りを果たした。同年後半は志垣良監督が指揮していたFC大阪に移籍。昨シーズンの京都サンガF.C.でのプレーを経て、今年、レノファに加入した。
ポジションはセンターバックで、長身を生かしたディフェンスは大きな武器。前節こそベンチで試合を眺めたが、今季はそれ以外の全てのリーグ戦にフル出場し、3月下旬にはJリーグYBCルヴァンカップの大分戦にも出て連戦を戦い抜いている。
「連戦はコンディションの良い選手が出るべきだが、僕は毎日を120パーセントで準備する。いつ出番が来てもいいように準備することは、シーズンを通して続けている」
その言葉が、松田という選手の等身大の姿だ。こどもの日の翌日に行われる水戸戦は、サッカー選手を夢に抱く子どもたちがたくさんスタジアムに来ていることだろう。今節は少し長めに紙幅を割いて松田という選手を紹介するが、「120パーセントの準備」を続ける彼の姿勢はきっと、未来のJリーガーにも届くはずだ。
言葉に真実味を与えるできごとがあった。4月19日、敵地で行われたサガン鳥栖戦でレノファは最終盤に追いつかれ、勝点2を失った。「ディフェンスラインとしてはやられてはいけない失点。相手の狙いが分かった状況でやられるというのは一番ダメだ」。天を仰いだ松田は夜、練習場で一人、ボールに向き合った。
「夜、一人で練習していた」。その姿に目を細めたのはFC大阪でも松田を指導した志垣監督だ。「人一倍残って、ボールを蹴る。そういう選手が伸びていく。挫折を味わっても、俺はこれでやっていくという環境に身を置いて努力することが大事。松田佳大はそれを感じさせる選手だ」。他人が100パーセントでやるなら、自分は120パーセントでやってやる――。指揮官をうならせる姿が夜の練習場にあった。
松田は「さすがに怒られましたけど」と睡眠時間を削ってのオーバーワークに頭をかいたが、悔しさが生み出す成長欲が松田をグラウンドに向かわせた。
「勝利というのが選手にとっても、チームにとっても、地域にとっても成長していく要素だと思う。それが掴み取れていない厳しい状況にあるが、自分の人生の上で、苦しいこと、つらいことの時のほうが絶対に成長できている。目を背けずに進んだ時に得られるものは絶対にある。チームは一丸となって戦えているので、自信だけはなくさずにやっていきたい」
それから1週間後のジュビロ磐田戦で結果へと昇華した。相手の外国籍選手を抑え、15.板倉洸とともに守備をコントロール。課題だったクロージングタイムでも前向きの矢印を持って戦い続け、クリーンシート(無失点)での勝利を飾った。
「クリーンシートで終えたのはポジティブなことだった。ずるずる下がるのではなくて、最後まで攻めに行くという姿勢を崩さずに戦うことができた。それがクロージングが良かった要因だと思う。得るものの大きい試合になった」
課題を一つ一つ乗り越え、成長を確かなものにしている。目指すのは「30歳でワールドカップ」だ。遠回りにも感じる目標設定だが、「中学生時代にできた夢。その時の自分では叶わないなと思ったのがチームメイトの瀬古歩夢(グラスホッパー・チューリッヒ=スイス)で、彼が代表になったので、サッカー人生を懸けてでも勝ちたいと思ってその夢ができた」と振り返る。
夢はレノファへの加入を促した。「FC大阪のときに志垣さんにその目標を話したら、一緒に叶えようと言ってくれて、レノファに来るときもそう言ってくれた。強化の人たちも一緒に羽ばたいていこうという話をしてくれた」。レノファの挑戦者への眼差しが移籍の決め手だった。
レノファの歴史を振り返ると、指標になる選手がいる。2014年にルーキーでレノファに加入した小池龍太(鹿島アントラーズ)だ。「自分がやっていかないと未来がない。個人個人がどれだけ自分を削って努力し、意識高くやっていけるかが大事だ」。小池は当時、そう気を吐き、チームと自分自身をJFLからJ3、J2へと導いた。その後、J1柏レイソルに“個人昇格”。渡欧してベルギーでもプレーしたほか、2022年には日本代表に初招集された。彼もまた汗をかくことを厭わず、120パーセントの努力を体現した一人だ。小池を育んだ土壌を思うと、松田にも羽ばたく資格はある。
「自分には足りないものは多いと思っているが、叶わないものではないとも思っている。自分の努力次第。全試合に出るくらいでやっていかないと成長速度は上がらないと思うし、全力で試合に出て、それプラス、得点も取っていきたい」
松田佳大の生き様に鮮烈な色を与えるライバルの存在、120パーセントの努力、飽くなき挑戦――。
ピッチに大事なものが詰まっていることを、松田は背中を通して我々に教えてくれる。そして、未来を夢見る子どもたちが集まる今日は、松田が夢への第一歩を踏み出した水戸と対戦する大切な一日だ。「思い入れがある相手。本当に成長した姿を見せたいし、レノファが勝つことにしっかりフォーカスしたい」。情熱をたぎらせるセンターバックが、レノファを高みに運び、自分自身も成長させる勝利を呼び込んでみせる。
仙台戦は外から見ていると体が重そうな感じが感じられました。その前の磐田戦でできていたプレスのスイッチがうまく入らず、一つ目のプレスに行くところが少なかったという印象があります。磐田戦では特に前半はプレスがはまって僕らの時間帯が長かったので、そういうゲームをできれば気持ちとしても楽にできると思いますし、プレスがはまることで僕ららしい戦いにできると思います。
水戸はどんどん前へ前へと来るチームだというイメージがあります。その相手にも磐田戦でできていた前からの守備というのは大事だと思いますし、相手陣地でボールを奪い切ることが本当に大切になると思います。そこから奪ってゴールにつなげられれば、僕らが本当にやりたいことができてくるのかなと思います。
今シーズンは追加点を取れれば結果は変わっていたというような試合が本当に多いので、追加点は狙っていかないといけないです。流れの中からもですが、仙台戦はセットプレーでやられてしまいましたが、逆に僕らがセットプレーで取っていくことも大事です。水戸戦は勝ちにこだわって、みなさんを感動させられるようなワクワクする試合をしていきたいです。
仙台戦は前半からすごく苦しい試合になり、うまくいかない状況が続きました。一度追いつくことはできましたが、そこからまたセットプレーで失点してしまい、自分たちで苦しくした印象があります。後半は流れを自分たちのほうに持ってこられた時間がありましたが、そこで追加点というのを取れなかったのはすごく痛かったです。
サイドハーフの時とトップで出る時がありますが、それぞれのポジションで守備のやり方は変わってくるので、そこは整理しながらやっています。ただ、攻撃に関しては変わりなくやるようにしています。磐田戦は守備の部分で自分たちが優位に立てました。守備が効くと攻撃も結構楽になるので、そこはすごく良かったです。
磐田戦で久しぶりに勝利したのは良かったですが、仙台戦は少し緩みが出てしまったということを感じました。自分たちが降格圏を脱出するには勝利することが絶対に必要です。チーム全体でもう一度引き締めて、必ず勝利できるように頑張っていきます。最近の得点はワンタッチゴールが多いのでそれは狙っていますし、自分が得点できていることは嬉しいですが、自分のゴールでチームを勝たせられるように、また決めていきたいと思います。
前節フォーメーション
前節ハイライト
前回対戦ハイライト
スタッツ
水戸ホーリーホック PICK UP PLAYER
西川幸之介選手(背番号34)
堅守水戸を支えるGK
マルスマンとの対決に注目!
昨シーズンまでは大分トリニータに所属し、今季から水戸でプレーする22歳のゴールキーパー、西川幸之介が相手の注目選手だ。西川は2年前の23年にJ2リーグ戦34試合に出場し、大分の一番手のキーパーとして活躍。しかし昨季はカップ戦での出場にとどまり、水戸に移った今年も開幕からしばらくは2番手だった。転機となったのは3月26日のJリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド1回戦で、この試合で先発を果たすと、リーグ戦の出場機会も掴んだ。
ルヴァンカップの熊本戦では無失点で耐え抜いただけでなく、自らが守るゴール前から鋭いフィードを敵陣左へと供給。ピンポイントのボールをFW安藤瑞季が収めて相手ゴールへと振り抜いた。西川がアシストしたゴールが決勝点となり、チームを2回戦に導いた。このキックもストロングポイントとなっているが、それはレノファのニック マルスマンも同じ。両チームともに長いボールを使う場面はあり、どちらがより精度高く蹴り出せるかも今節の注目点だ。
今の水戸は堅守も大きな強みとなっている。4試合連続で無失点と手堅く、西川は素早い判断でファインセーブを重ねる。レノファが得点を挙げるには相手の守備を崩すだけでなく、最後を守る西川も越えていかないといけない。なるべく多くのシュートを多彩なパターンから放ち、堅守水戸の牙城を崩す必要がある。若きゴールキーパーに向き合う今節は、レノファ攻撃陣にとっても真価を発揮すべき試合になる。
INFORMATION
5/6 HOME GAME