
JリーグYBCルヴァンカップの1stラウンド2回戦に進出したレノファ山口FCは4月9日、維新みらいふスタジアムでJ1鹿島アントラーズと初対戦する。
レノファはこれまで鹿島と対戦したことはなく、初顔合わせのゲームになる。鹿島はリーグ戦前節終了時点でJ1で3位に付けている強豪。2連敗で首位こそ明け渡したが、9試合8得点で得点ランキングトップに立つブラジル人ストライカーのレオ セアラ(背番号9)が攻撃を引っ張る一方、複数失点がほとんどない堅牢な守備がリードを守り勝点を積み重ねている。
逆にレノファは前節、リードを守り切れずに勝点2を失う試合となった。志垣良監督は「一人一人が何を背負ってやるか。(各選手が)自分のやること、戦術的な行動はすごくやってくれているが、その次にどうやって勝つかというところにフォーカスしないといけない。そこがリーグ戦で出ている課題」と振り返り、こう続ける。
「亀川諒史がいない状況で誰がゲームを締めるか。まだ試合巧者になれていない。先制されても取り返し、1-0で勝っていたら、したたかに試合を締める。それができているのが鹿島で、育成までそれが浸透している。ただ、鹿島から学べるものも本当に勝ちにいかないと得られない。レベルの高い相手とやって、自分たちでその(学びの)権利を得ていくということが大事になる」
堅守と速攻を高い質で体現する鹿島との対戦は、まさにレノファにも試合巧者の戦い方が求められるゲームとなる。では、レノファが為すべきことは何か。参考になるのは昨シーズンの天皇杯だ。当時J1のサガン鳥栖に勝利し、準々決勝では結果的には大敗となったものの横浜F・マリノスに果敢に挑み続けた。その経験を踏まえると、まずは試合の入り方が重要になってくる。
志垣監督は昨秋、横浜FM戦に際して「最初の15分」をキーワードに挙げ、「インテンシティーとスピードはJ2とは違う。立ち上がりで相手のスピードを体感し、慣れる」ことの重要性を説いた。今回の鹿島戦でも序盤の15分を耐えつつスピード感のギャップに慣れれば、その後の75分間でレノファが良さを出せる時間は出てくるだろう。
守備をする中で気をつけなければならないのが、相手のセットプレーと縦のスピードだ。今季から鬼木達監督が指揮する鹿島は、ボールを持ちながら試合を進める鬼木監督のスタイルを要所で出しながらも、ベースとしてはチーム全体に浸透する縦の速さとセットプレーの強さを生かす。
FWには背後に抜けるスピードと181cmの高さを持つ田川亨介(背番号11)やリーグ戦前節で強烈なミドルシュートをしずめている師岡柊生(同19)を起用する可能性があり、サイドアタッカーでは古巣戦となる小池龍太(同25)がプレーすると想定される。彼らに簡単に背後を取られてしまうと失点のリスクが高まるほか、ファウルで止めざるを得ない場面が出てきてしまい、負の連鎖となる。そうならないために、守備局面では焦れることなく、バランス良く守っていきたい。
もっともレノファの攻撃でもセットプレーとスピードを生かしたカウンターはポイントになる。くだんの横浜FM戦でもカウンターはチャンスになり、30.奥山洋平はスピードを生かして相手陣を駆け抜けた。その奥山は「特徴を出したい」と話し、次のように意気込みを語る。
「綺麗に裏を取れれば負けないと思いますし、普段の練習からやっていることを活かしたいです。普段はレノファを見ていない人でも、鹿島戦は興味を持って見てくれる試合になると思います。山口のサッカーを活性化するにも良い機会。カテゴリーに関係なくしっかり勝って次に進みたいです」
セットプレーでは精度の高いキックを持つ10.池上丈二にも期待が懸かる。池上は2022年の天皇杯3回戦ヴィッセル神戸戦で先制点を決め、昨年の横浜FM戦では後半途中から出場して3本のシュートを放つなど、強豪相手にも自分のプレーを披露してきた。今年のレノファは池上が得意するゾーン、すなわちペナルティーエリアやや手前でのフリーキックを獲得する機会が何度もあり、池上がピッチに立てば、セットプレーでゴールネットを揺らす瞬間も訪れよう。
いつもの試合に比べるとレノファが押し込まれる時間が長くなるのはやむを得ない。ただ、耐えるべき時間を耐え、相手の強度とスピードに慣れれば、必ず試合の流れはやってくる。
挑戦することこそが道を拓く鍵となる。リーグ戦にもつながる好ゲームを繰り広げて、3回戦へ!
水曜日のナイトゲームも全力を注ぎ、熱いフットボールと熱い応援で勝利を手にしよう!
鹿島アントラーズは10チームでのJリーグ発足に名を連ねた「オリジナル10」の一つ。前身は住友金属工業のサッカー部で、長らく全国リーグの日本サッカーリーグ(JSL)を舞台に戦ってきた。Jリーグ発足直前のJSLでは2部に所属していたが、2位の好成績でラストシーズンを戦い終え、Jリーグに舞台を移した。
オリジナル10のうちJ2に降格した経験がないのは鹿島と横浜F・マリノスのみ。鹿島は1993年のJリーグで前期にあたるサントリーシリーズで優勝を果たし、1996年には通年でのJリーグ初優勝を達成する。
同年はジョルジーニョが最優秀選手に選ばれるなど、J黎明期にはジーコ、ビスマルク、アルシンドなどを擁して注目を集め、のちにJリーグクラブの監督にもなる手倉森誠、相馬直樹、秋田豊などの日本人実力者も鹿島のユニフォームで戦った。
そのうちの一人が、今年から指揮を執っている鬼木達監督だ。鬼木監督はJリーグ戦が始まった1993年に鹿島で選手としてデビューし、計6シーズンを鹿島で過ごした。川崎フロンターレに移籍して2006年まで現役選手としてプレー、引退後は川崎ユースのコーチなどを務めたのち、2017年に川崎のトップチーム監督に就任する。
川崎ではハイポゼッションのチームスタイルを確立して旋風を巻き起こし、8シーズンで4度のリーグ制覇を成し遂げたのは記憶に新しいところだろう。その一方で鹿島は2017年以降、リーグ戦では上位に顔を出せどもシャーレを掲げることはなかった。常勝軍団復活へ、今年、鬼木監督に大役が託された。
果たして今年の鹿島はJ1を快走している。
開幕戦こそ敗れたが、その後は複数得点を挙げて4連勝を飾るなど勝利を重ね、前節終了時点で5勝1分3敗で3位に立つ。ルヴァンカップでは1stステージ1回戦で栃木シティに1-0で勝利し、2回戦に駒を進めた。
戦い方は堅守をベースに、ハイプレスを掛けてのショートカウンター、背後を狙ったフィード、選択肢を豊富に持つセットプレーなどで好機を作り出す。ただ、相手に掴まりにくいポジションを取りながらボールを持つ時間も作っており、ハイブリッドな戦い方も目を引く。
前線ではレオ セアラ(背番号9)がリーグトップの8得点を決めている。日本代表や年代別代表で活躍してきた日本人選手もチームを牽引し、柴崎岳(同10)は卓越したボールコントロールからフィニッシュシーンを作る。2トップの一人の鈴木優磨(同40)はどのような形からも点が狙える冴えたストライカーだ。
注目選手は2014年にJFL時代のレノファに加入してサイドバックとしてプレーした小池龍太(背番号25)だ。果敢な縦への突破でチャンスを創出し、J3とJ2への2度の昇格に大きく貢献した。柏レイソルやベルギーでのプレーを経て、2020年からは横浜F・マリノスに所属。昨年は天皇杯での古巣対戦が実現した。
今年は鹿島に移り、リーグ戦全試合に出場している。右のサイドハーフが主戦場となっているが、どこにでも顔を出してプレスを掛けたり、ボールを運んだりとクレバーな選手であるだけに、中盤やサイドバックで幅広くプレーできる。
小池がサイドハーフで試合に出れば、11.横山塁、36.末永透瑛などとのマッチアップが予想される。
オン・ザ・ボール、オフ・ザ・ボールともに小池のスピードは脅威となるが、日本のトップカテゴリーで活躍を続ける元レノファ選手のプレースピードやデュエルに負けないようにタフに戦っていきたい。
伝統のサッカースタイルを堅持しながらも、常勝軍団復活を目指してサッカーを進化させている鹿島アントラーズ。彼らとの対戦だけでもレノファは大きな経験値を得られるが、チームは「勝ってその先へ」と思いをたぎらせて、全力勝負に挑む。
リーグ戦に出てくるメンバーがそのまま出てくるかは分からないですが、鹿島は本当にクオリティーが高い選手が揃っています。小池龍太選手とは一緒にはやっていませんが、レノファで活躍し、ビッグクラブに行っても活躍している選手だということもよく知っています。柴崎岳選手は(青森山田高校の)先輩でもあります。そうした選手がいて、J1でも上位にいるチームと対戦できるのは楽しみです。
まずは失点しないことはもちろんですが、最悪1失点くらいに抑える。複数失点すると難しい試合になると思います。立ち上がりに失点してしまうと勝つ確率は低くなってしまうので、試合の入りのところは意識しながらやっていかないといけないと思います。自分たちは得点は取れていますが、複数得点がなかなかないので、決め切る力は見せないといけないですし、自分が出たら見せて数字にこだわってやっていきたいです。
神戸と試合をした時(2022年天皇杯3回戦)に得点を取ることができましたが、最後の最後まで相手にはクオリティーがあり、最後に逆転負けしました。前節のリーグ戦もそうでしたが、最後まで引き締めてやっていかないといけないと思います。ビッグクラブと試合ができる機会はそんなにないので、楽しんでやりつつ、結果にこだわって勝って次に進めるようにチームとして戦っていきたいです。
鹿島はオリジナル10のチームですし、今までJ2に降格したこともないチームです。そういう歴史があるチームと対戦できますが、ただリスペクトして試合をするのではなくて、常勝軍団がどういう意識でやってきているかは、自分たちが今年のリーグ戦を戦う上でも学びがあるものになると思います。そこを感じながらも、結果にこだわってやっていきたいです。
山口県にそういうチームが来ること自体があまりなかったことだと思います。元日本代表の選手がいることも、今の子どもたちにとってもワクワクする試合になると思います。僕も小さい頃、そういう選手の試合を見られるというだけでも興奮していました。子どもたちにとっても盛り上がれる試合にしていきたいと思います。
(鹿島は)点を取る、守りきるという勝利に対してやるべきことを第一優先でやってきているチームだと思いますし、インテンシティーの高さでもJ1トップクラスだと思います。そこに対して自分たちが上回っていくという気持ちでやっていかないと一方的な試合になってしまう。
今まで以上に強度を求めてやっていきたいです。チームの勝ちを目指しつつ、個人としての価値も見せないといけないです。リーグ戦でなかなか使われなかった不甲斐なさも感じているので、自分の良さも出していきたいと思います。
前節ハイライト
INFORMATION
●EVENT INFORMATION
●NEXT HOMEGAME