
今シーズンは早くも折り返し地点に達した。維新みらいふスタジアムでのいわきFC戦で前半戦が終わり、次節からは後半戦となる。チームの喫緊の目標は降格圏脱出だ。勝点2差の相手から白星を積み上げ、浮上ののろしを上げていこう!
レノファ山口FCは6月11日に天皇杯2回戦を戦い、中3日で今節を迎える。天皇杯は38.末永透瑛が同点ゴールを決めるも最終盤に勝ち越され、無念の敗退となった。チームは後半45分間をほとんど支配し、内容面では十分な手応えを得る試合をした。ただ、もう1点取れれば勝てたという90分間だっただけに、ゴール前のクオリティーをもっと突き詰める必要があるのを痛感する試合にもなった。
「決定力」はチーム全体の課題であり、天皇杯前後のトレーニングでゴールまでの流れを再確認したほか、ストライカーたちは全体練習後も質に向き合った。
「天皇杯を含めて良いところもありましたし、修正しないといけないところももちろんあったので、そこは全員で確認してきました。ここからの3試合は全て勝ち、相手にポイントを与えないということが絶対条件です。(前節千葉戦からの)2週間、そこに向けての充実したトレーニングはできたと思います」
いわき戦が古巣対戦でもある9.有田稜がそう語るように、ゴール奪取に向けた準備は万端だ。前線は34.古川大悟もいわきに2年間所属してチームをJFLからJ3に導いた経験があり、相手をよく知るプレーヤーたちの躍動は楽しみだ。
前線にボールをつなげていく部分では天皇杯・徳島ヴォルティス戦での手応えを、今節のいわき戦にも活かしたい。相手のフォーメーションや攻撃の組み立てで徳島と似ている面があるのは、レノファにとって好都合。良いプレスを掛けて相手の自由を制限し、高い位置でボールを取り返せればショートカウンター、低い位置まで持ち込まれても、相手の前向きベクトルの裏を突く速攻で主導権を握り返したい。
レノファの攻撃では新戦力の29.輪笠祐士に注目だ。天皇杯ですでに45分間出場しているが、今節も試合に出ればホームスタジアムで躍動するに違いない。味方を活かすプレーに長け、攻守に安定をもたらすボランチが、攻撃に良いリズムを生み出してくれるだろう。本領発揮となれば、17.田邉光平、40.成岡輝瑠など若手ボランチがより高い位置でプレーする機会も増えてくる。
対するいわきは現在、14位に位置している。19位レノファとの勝点差は2。順位としては少し離れているが、勝点がほとんど変わらない僅差の戦いとなっている。
いわきはリーグ戦前節の試合でロアッソ熊本に5-1の大勝を挙げた。前線で起点となるべき選手がその役目を果たしたのが大きく、5得点全てに関わった熊田直紀(背番号38)、リーグ戦2戦連続ゴールでミッドウィークの天皇杯でもゴールを決めている谷村海那(同10)はレノファが最も警戒しないといけない選手だ。直接対峙する4.松田佳大や5.喜岡佳太が1対1を制することとセカンドボールの攻防はカギを握る。
レノファは18.亀川諒史が累積警告で出場停止のため、セカンドボールを拾ったり、奪ったあとのボールを安定して動かしたりするには、新しく入る選手との連係も重要になる。サイドバックは15.板倉洸や27.小澤亮太、76.磯谷駿などが候補。それぞれの持ち味を出しつつも、チームとして連動して動き、相手のストロングに対応していきたい。
試合は停滞する時間が少ない展開となりそうだ。お互いに得点を取りに行くアグレッシブさが前面に出て、行ったり来たりのゲームになると予想される。選手にとってはハードワークを強いられるが、見ている人にとってはワクワクする攻防が終始見られるだろう。シュートチャンスも必然的に多くなるはずで、今度こそは複数得点が得られるようにゴール前の質にいっそうこだわりたい。
今節は前半戦ラストマッチとなるが、みらスタで行われる昼間の試合も一区切りで、このあとはナイトゲーム中心の夏の戦いへと入っていく。ターニングポイントにある負けられない一戦は、激闘必至! もちろん最後に笑うのはホームチームだ。どこにも負けない熱い応援とピッチ上の熱いバトルで、梅雨模様を晴らす快勝を引き寄せよう!
「成長した姿をお世話になった人たちに見せたい」。34.古川大悟はプロ生活の中でも一際特別なチームを維新みらいふスタジアムに迎え、そう誓う。
古川がいわきFCで過ごしたのは2021年と22年の2年間。21年はJFLで戦っていたチームで二桁ゴールを挙げ、優勝でJリーグに導く立役者の一人となった。チームのJリーグ加盟は、古川自身がJリーガーに返り咲くという意味でもあり、キャリアの大きな転機となった――。
ジェフユナイテッド千葉のアカデミーで育ち、2018年にトップチームに昇格を果たす。しかし出場機会には恵まれず、2019年にJFLヴィアティン三重に期限付き移籍。「自分が成長するために」と選んだ武者修行で試合経験を積み重ねたものの、千葉には戻れず、20年末には三重と同じくJFLを舞台とするいわきに完全移籍した。
当時の千葉のプレスリリースで「必ず戦力として(千葉に)戻ってくるという強い気持ちを持って出て行きました。なのでこのような結果はとても悔しい」と心中を語った古川だったが、退路を断ったいわきで心身ともに鍛え直す。
「いわきは身体的な部分でも成長させてくれたクラブ。本当に良いスタッフ、良い選手が揃っていて、僕自身、本当にお世話になった。いわきで成長させてもらった部分が試合では大事になると思います」
J3リーグに上がったいわきでJリーグ初ゴールを含む3得点を挙げ、2023年からはFC大阪で主力を担う。そして今年はJ2のレノファ山口FCに加入し、当時の千葉と同じJ2のカテゴリーに戻ってきた。自分で道を切り開いて再到達したJ2。古川は「5ゴール」を第一目標に、「チームのために走って点を取っていきたい」と話す。
実際に今季は5月25日の藤枝戦を除く全てのリーグ戦に出場し、2ゴールを奪取している。フィジカルを活かして前線で起点となるほか、背後への飛び出しでも違いを見せる。プレスの掛け方が整理されるなど成長も著しく、ミッドウィークの天皇杯2回戦では今年初めて90分間をフル出場した。
「ボールを持ったあとの質で失ってしまうことがチームとしても個人としても多かったのは反省点ですが、後半は比較的、前からプレスではめに行ける場面もありました。前半から出せればもっと状況は変わっていたと思います。改善する部分もまだあると感じた試合でした」
フル出場から中3日で迎える古巣戦だけに、先発出場というよりは、途中から試合に入る可能性のほうが高いだろう。ただ、古川はどういう役目であってもしっかりとした準備をして試合に臨む。
「選手一人一人の能力はいわきも高いと思いますし、局面の戦いが大事になる試合です。本当に一人一人の球際の強さだったり、切り替えの部分だったり、そういうところで相手を上回らないといけないと思います」
そう話した古川は「FWの谷村(海那)選手は一緒にやっていた選手ですし、一緒にプレーした選手が活躍しているので、その中で僕も負けないように活躍したい。本当に彼より得点を取りたいと思います」と同じポジションで戦ってきた元チームメイトとの対戦にも気持ちを燃やす。
(いわきは)2トップが強力で、個人で点を取れる選手がいます。そこに集中して自分たちセンターバックは防がないといけないと思います。いわきは縦に速く、強度も高いので、少しでも自分たちがふわっとすると、そういう時間でやられるということもあります。セカンドボールもずっと相手に拾われると相手のリズムになってしまうので、自分たちがそういうところで負けないようにしないといけないと思います。
相手は苦しくなったら2トップにダイレクトに入れてくると思いますが、そこに対してチャレンジして負けないということはもちろんですが、チャレンジしたあとのカバーも大事です。自分たちはファーストボールを競るので、競らない選手が声を掛けたり、練習で合わせたりしてセカンドボールは回収したいです。あとは上にボールがあるときにどれだけ声を掛けられるかもやっていかないといけないと思います。
(亀川諒史選手が出場停止で)サイドバックは若い選手が入るかもしれないですが、ポテンシャルはもちろんありますし、走力で長けている部分もあると思うので、そういうところではのびのびやれるようにしたいです。守備のところでは声を掛け合って守って、なるべく新しく入る選手がのびのびやっていけるようにしていきたいです。
いわきはアグレッシブに戦ってくるチームで、90分間倒れないサッカーを体現しています。そこは僕がいわきにいた時も言われていましたし、そこでは負けたくない相手です。一つの球際だったり、そこでの反応という部分は大事だと思います。どちらが先にボールに触れるかという勝負になると思いますが、相手のプレスにずっとはまってしまうと相手の土俵に立ってしまうので、どうプレスをはがしていくか、そこに関しては良い準備ができたと思います。
自分がやっていた時にいた選手との対戦はもちろん楽しみです。遠藤凌選手とはマッチアップすると思うので、そこの勝負はすごく楽しみにしています。谷村海那選手は大学(国士舘大)の先輩で、面倒を良く見てもらっていました。谷村選手は今、すごく乗っているので、負けたくないです。
今年の前半戦はこれだけ試合に出させてもらっていて、結果を残せなかったということにはすごく責任を感じています。レノファがこの順位にいるというのはおかしいと思っていますし、そこには自分の責任を感じています。前半戦も良さん(志垣良監督)のやりたいサッカーは表現できていて、絶対に勝てなかった試合というのは一つもなく、接戦で負けてしまうということが多かったです。やっていることは間違っていないということは全員が認識しているので、これからの試合や後半戦は良くなっていくと思います。
前節フォーメーション
前節ハイライト
前回対戦ハイライト
スタッツ
いわきFC PICK UP PLAYER
谷村海那選手(背番号10)
強力ないわきの2トップ
集中した守備が必須!
今シーズンの全試合に先発中で、ミッドウィークの天皇杯でもゴールを挙げた谷村海那は、レノファの選手たちが名指しで警戒するストライカーだ。リーグ戦と天皇杯2回戦を合わせて3試合連続でゴールネットを揺らしており、リーグ戦前節の熊本戦では山下優人(背番号24)が上げた左からのクロスボールにファーサイド側から飛びつき、豪快にヘディングシュートをしずめた。
谷村は9.有田稜と同じ国士舘大出身で、大卒ルーキーとして2020年、JFL時代のいわきに加入。毎年のようにゴールを量産してチームを引っ張り、いわきをJ3、そしてJ2へと押し上げた。昨シーズンのJ2リーグでは小森飛絢に次ぐ18ゴールで得点ランキング2位に入り、今年もここまで6得点と活躍を続けている。前節のようなクロスからのヘッドもあるが、天皇杯ではドリブルで相手を交わしてゴールに送り込むなどバリエーションは豊富だ。
2トップのもう一人、熊田直紀(背番号38)にも警戒が必要になる。熊本戦でチームが決めた5点の全てに熊田は関わっており、オーバーヘッドで先制点を決めたほか、アタッキングサードで起点となって他の得点にも絡んだ。谷村と熊田の二人だけでゴールシーンを作れるだけのパワーがあり、レノファ守備陣は彼らへの供給に対してしっかりと跳ね返すのみならず、セカンドボールを積極的に回収して二次攻撃を防がないといけない。その連動した守備が無失点のために重要になる。
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