
勝点1差の16位藤枝MYFCをホームに迎える今節は、レノファ山口FCが降格圏から脱するためにも勝利という結果が絶対に必要になる試合だ。スタジアムを包む応援の力と選手たちのハードワークで、リーグ戦2連勝の勝点3を手にしよう!
レノファは今週もタイトスケジュールとなったが、3連戦はいずれもボールポゼッションを得意とするチームとの対戦となった。連戦初戦のモンテディオ山形戦では、相手の得意な形を出させないプレスを掛けて1-0で勝利。続くJリーグYBCルヴァンカップの柏レイソル戦は、J1チームのボール保持力に苦戦したとはいえレノファは大きな経験値を得た。この2試合の知見を引っ提げて、今節の藤枝戦に臨む。
藤枝は3-4-2-1のフォーメーションを組み、基本的にはボールを動かしながらゴールに近いエリアに入っていく。中央からサイド、サイドから中央へという洗練されたフットワークは、レノファが守備に回った時には大きな脅威になる。
まずは彼らのボールポゼッションの質を下げさせるプレスが必要になるが、図らずも藤枝は山形、柏とフォーメーションがほぼ同じで、3バックと2枚のボランチで組み立てを始める。
柏戦では相手の攻撃開始地点にプレッシャーを掛けることはできたが、レノファ陣まで入られたあとは後手に回り、サイドチェンジやボックス内への侵入を許してしまった。藤枝もサイドではシマブク カズヨシ(背番号19)が良い起点となっており、レノファはプレスの連続性を欠いた柏戦の反省を大いに生かして、相手の進撃を止めていきたい。
気をつけなければならないのは、藤枝が縦に素早く蹴ってくる可能性もあることだ。セネガル出身のセンターFWディアマンカ センゴール(背番号29)は身長189cmのハイタワー。ボールポゼッションが難しい時には、彼の高さやブラジル人FWアンデルソン(同11)のモビリティーを生かす場合もあるだろう。相手が蹴ってくればセンターバックの跳ね返す能力が物を言い、復帰したばかりの5.喜岡佳太、柏戦をスキップした4.松田佳大などの対応もポイントになる。
藤枝が4連敗中であるということや右ウイングバックの松木駿之介を出場停止で欠くということも考えれば、レノファイレブンは相手がどういう攻撃をしてきているかを見極め、適切な対応をしていく必要がある。
もっとも柏戦とは異なり相手に一方的にボールを握られる試合にもならないだろう。藤枝と対戦したチームの決定機を見ると、システム上のウィークポイントである3バックの脇を取ったり、そこからのクロスに人数を割いたりしている。サイドを仕掛けて相手のウィークを突く動きでは、4月の「明治安田J2リーグ月間ヤングプレーヤー賞」を受賞した45.山本桜大、ルヴァンカップでも貪欲に前に向かう姿勢を見せた11.横山塁などにも期待が高まる。攻撃陣の躍動も必見だ。
順位が近い相手との対戦は、レノファが浮上する上で、必ず勝たなければならない試合だ。プレッシャーも懸かるが、前節のリーグ戦で戦列復帰した5.喜岡佳太は「6ポイントマッチは落とせない」と鋭い目つきでこう語る。
「山形戦を無失点で耐えられたのは自信になるし、藤枝戦でさらに継続できればもっと自信になっていく。本当にこの試合が大事。最後をやらせないというメンタルは大事になるので、きついときの後ろの選手の声掛けはもっと必要になる。そういうところも試合に出ればやっていきたい」
さあ一戦必勝の藤枝戦が始まる。ここからの上昇へ、今節も全力で戦い、維新みらいふスタジアムにみんなで歓喜の瞬間を呼び込もう!
昨年途中にFC町田ゼルビアから加入し、他を凌駕するスピードで違いを見せつける30.奥山洋平。完全移籍に切り替えた今年は、「結果を出さないと試合にも出られない。得点とアシストでゴールに関与することを目標に一試合一試合を戦っていく」と一層の覚悟を持って勝利へとひた走っている。
藤枝と対戦する今節もその奥山がキーマンの一人だ。一瞬で背後を取るスピードもあり、中距離もタフに走れる奥山は、まずはカウンターで強みを発揮してくれるだろう。今節はショートカウンターよりはロングカウンターが増えそうだが、奥山は「相手のボールを奪ったときの攻守の切り替えは大切。後ろから長いボールが(相手陣地の)奥に出てきても自分としてはやりやすいと思う。そこは狙ってやっていきたいです」と走力を生かす考えを示す。
もっとも、奥山の強みはスピードだけではない。今のレノファに求められるアクションを起こすことや、ゴール前でクオリティーを出すことも彼の役割。4月29日のジュビロ磐田戦ではそれを完遂し、実際に得点を呼び込んでいる。
試合を通してボールを保持しながらチャンスをうかがっていたレノファは66分、40.成岡輝瑠が相手守備の懐に差したくさびを契機に攻撃をテンポアップ。その縦パスを8.野寄和哉が巧みにさばいて背後に流すと、奥山がペナルティーエリアの左外から走り込んでボールに飛びついた。そしてすかさずグラウンダーのクロスボールを蹴り込み、45.山本桜大の決勝点をアシストした。
「野寄選手とか山本(桜大)選手がボール持った時に、自分が前に動き出せばボールは出てきます。試合の中で自分も動き出しやすいですし、そういうところは狙っていきたいと思っています」
奥山は関係性の良さをそう表現するが、動き出しだけではなく、ラストパスの選択も秀逸だった。
得点場面の映像を見ると分かりやすいが、左サイドを駆け上がる奥山から見ると、野寄からのパスは右後方から来ていた。そしてパスを送り出す先の選手(山本桜大)も右側にいた。この状況でダイレクトにボールをさばこうと思うと、利き足ではない左足で蹴るほうがスムーズ。しかし、奥山は一瞬スピードを落としてボールを引き込み、右足インサイドでのキックに切り替えたのだ。
「あのタイミングで僕が裏に出ていくという話はカズ(野寄)ともしていたので、ボールを出してくれました。僕が裏に出て、本当にここというところにボールが来て、中を見たら桜大がいました。ただ、ちょっとだけボールが手前だったのと、やはり右足で蹴るほうが得意なので、左ではなく右で丁寧に合わせようと思って右で蹴りました」
瞬時の判断が山本桜大の2試合連続ゴールにつながり、レノファは久しぶりの勝利に沸いた。藤枝戦でもカウンターのほか、サイドから仕掛けたり、味方との連係から背後を取っていくシーンはあるだろう。息が合うという野寄などとのコンビネーションとそこからの秀逸な判断にも期待が懸かる。
もちろん前線でプレーすれば、相手を後ろ向きにさせる守備も重要だ。奥山はファーストディフェンスへの貢献も意識し、重要な一戦への意気込みをこう語る。
「守備をはめやすい相手ではないので、守備に回る中でもマイナス思考になるのではなくて、大事なエリアには入れさせていないというつもりで戦うことも大事です。プレスがはまっていないと感じる試合でも、チームとしてはゴール前をしっかり守れていることは多いです。タフな戦いになるとは思いますが、ネガティブになりすぎず、粘り強くやっていきたいです」
圧倒的なスピードの中にも繊細さ宿し、柔軟なプレーで決定機を創り出す奥山洋平。藤枝戦もその特長を攻守に生かして、勝点3へと駆け出していく。千変万化のパフォーマンスを見せるスピードマンから目が離せない熱戦がまもなくキックオフの時を迎える!
復帰してから日数があまり経っていなくて、連戦で練習試合もやれていなかったですが、リハビリ中は心肺機能のところもやってきましたので、徐々に良くなってきていると思います。山形戦では1-0の状態でしたので、クローザーの役割もあると思って備えていました。これまで勝っていて引き分けに持ち込まれているような試合もあったので、声を掛けたり、ヘディングで跳ね返したりして無失点で抑えられたのは良かったです。
藤枝はボールをつなぐチームですし、我慢強く後ろが耐えることが重要だということは分かっています。前線の選手はきつい時間が長いと思うので、後ろの選手が走ってマークを拾ってあげるということも意識したいです。もちろん、前から行ってはがされてボールを持たれる時間もあると思います。そこでボールが奪えなくてきついという感覚に陥ってしまう選手も多いと思いますが、やられなければよいというメンタルを持つことも大事。しっかり声を掛けていきたいと思います。
藤枝戦は6ポイントゲームだと思います。レノファは得点が取れていないわけではないので、最終ラインが無失点で進めていく中で、前線の選手にしっかりと点を取ってもらいつつ、セットプレーではなかなか得点できていないので、そういうところでしっかり狙っていきたいです。降格圏をまずは脱するために、スタメンに出ることがあれば期待に応えたいと思います。
まだ3勝しかできていないので、まだまだだと思っています。山形戦は相手がボールをつないでくるチームでしたが、自分たちは状況に合わせて自分たちのゾーンではあまりつながず、プレーをはっきりやるということは言われてもいましたし、そこはしっかりできたと思います。久々の勝利でしたので嬉しかったですが、まだ状況は変わっていないので、勝利を積み重ねていかないといけないです。
ボールを握れればという感じの時もありますが、まずは守備から入るというやり方をやっているので、ボールを奪ったあとでどう前に繋げていくかが大事だと思います。苦しい時間を耐えてボールを取ったあとに、また取り返されて守備になるということはあるので、取ったあとにもう一つはがして前に進められるか。(素早く行くか、持つ時間を作るかの)判断のところは大事です。
藤枝もボールをつないでくるというイメージはあります。プレスのところはどの試合もそうですが大事になると思います。(攻撃の)セットプレーは感触は悪くないので、キッカーとしては「決めてくれ」としか言えないですが、感触としては上がってきたという感じはあります。流れの中では(ボランチを組む田邉光平選手とは)距離感を保って良い関係性でやれればと思います。
前節フォーメーション
前節ハイライト
前回対戦ハイライト
スタッツ
藤枝MYFC PICK UP PLAYER
楠本卓海選手(背番号5)
レノファでデビューしたセンターバック
セットプレーの攻防は必見!
センターバックとしてプレーする楠本卓海が藤枝の注目選手だ。東京国際大卒のルーキーとして2018年にレノファに加入し、2021年までの4シーズンを山口で過ごした。その後、水戸ホーリーホックに移籍して3年間プレーし、今年から藤枝のセンターバックを務める。シーズン序盤戦は出場機会が少なかったが、4月中旬以降はコンスタントに試合に絡み、直近2試合はいずれも先発する。
ポゼッションスタイルの藤枝では攻撃の第一歩を担い、ボランチやゴールキーパーともパス交換しながら機を見て大きな展開を作る。楠本がレノファに所属していた時は、チームがボール保持に軸足を置いていた時期にも重なり、当時のレノファで培った経験が今のサッカーにも生きているだろう。また、攻撃時のセットプレーではターゲットの一人となる。4月20日の北海道コンサドーレ札幌戦では立ち上がりの時間帯で積極的にミドルシュートを放ち、その流れで得たコーナーキックから藤枝移籍後の初ゴールをしずめている。
レノファとしては楠本から良いボールが出ないようなプレッシングが大事になる。対峙する9.有田稜、45.山本桜大などのプレスと、それをはがそうとする楠本との攻防は見応えがある。もちろんセットプレーは攻守で熱いバトルになり、水戸で一緒にプレーしている4.松田佳大とも火花散る戦いとなりそうだ。レノファでデビューを飾った楠本も今年12月に30歳となる。経験を蓄えしたたかに戦う元レノファ戦士との対決に大いに注目だ。
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